2016.10.21

技術・開発

Looopでんち | 再生可能エネルギーの『地産地消』を家庭でも実現

再生可能エネルギーは、地球温暖化の原因となる温室効果ガスを排出しない、さらに資源の枯渇の恐れのない、優れた電源です。ただその欠点は、天候や環境に左右されてしまう出力の不安定さ。Looopはそんなエネルギーを“蓄えられる”機能だけではなく、電力の充放電を効率的に行って節電・節約を叶えるAIとの通信により自動制御する製品を開発しました。

固定価格買取制度(FIT)で普及が進んだ再生可能エネルギー

地球温暖化という深刻な環境問題や世界的なエネルギー市場の不安定化などを背景に、世界は環境に負荷をかけず安定的なエネルギーを供給する方向を目指しています。また日本では、東日本大震災を契機に原子力に頼っていたエネルギー政策からの脱却が求められ、安心安全で持続可能なエネルギーへの転換が喫緊の課題となっています。そのためには太陽光や風力などの再生可能エネルギーの導入を積極的に進めることが必要で、日本国内でも促進目的の施策や補助金制度が作られてきました。その代表例が2009年に始まった「再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)」です。電力会社に再生可能エネルギーで発電した電気を一定価格で買い取る義務があり、その費用は電気を利用する全国民から集める制度です。制度導入後、日本の発電電力量に占める再生可能エネルギー(水力を除く)の割合は、1.4%から3.2%に増加し、設備導入率は3年間で33%上昇しました。

FITのデメリットをカバーする蓄電池がぶつかったコストの壁

しかし、再生可能エネルギーの普及が進む一方で、「2019年問題」が浮上しました。それは、2009年にスタートしたFITの固定価格買取が、10kW未満の住宅用は10年間、10kW以上の産業用では20年間と買取期間が決められていることに起因しています。その買取期間の終了を迎える事例が2019年から発生すると、電力会社の買取価格の大幅下落や場合によっては買取自体の拒否が想定されるため、せっかく普及した太陽光発電がまた割高な設備となり、普及の波が滞ってしまう可能性があるのです。

そこで2019年問題の解決方法として大きく期待されているのが蓄電池です。もともと太陽光発電は夜間や悪天候時には出力が不安定であり、また余った電力は電力会社に売電するしかないというデメリットを抱えていたので、蓄電池は太陽光発電と相性のいい存在として認知されていました。しかし蓄電池はかなり高額な製品であり、割高な割には性能のいい製品ではありませんでしたので、太陽光発電の設備と比べるとその普及は進んでいませんでした。蓄電池の補助金制度もあり、一部でど導入が進みましたが、それでも初期費用が高く普及率が伸びなかったこと、また補助金も打ち切りとなってしまい、普及が鈍化しました。

しかし、特に再生可能エネルギー最大普及を目指す私たちにとって、再生可能エネルギーに共通する、発電量の不安定さを解消できる蓄電池の存在は欠かせません。私たちはまず一番の壁となっているコストを下げることから始めました。蓄電池システム全体の費用のうち、やはり一番多くのコストを締めているのは電池です。そのため、電池のコストを下げることが必要でした。ただ、他社では非常時の使用を考慮して大容量の電池を使用していましたが、私たちはまずそこに疑問を持ちました。太陽光を設置している家庭にはそこまでの容量が必要ないのではないか、と。そこで、Looopでは1,000軒を超えるご家庭の電力使用状況のデータを解析、シミュレーションをし、コストと実用性のバランスをとれる電池容量を検討。NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の助成を受けながら、実証も重ね、日常生活にも非常時にも問題のない電池容量として4.0kWhまで下げることを決めました。電池以外の部分でも、自社の産業用太陽光発電所の監視装置を利用し、蓄電池に搭載する通信機器の部品の共通化や、良質で最安の部材を調達することで、蓄電池全体の価格を下げる工夫を徹底。結果、150~270万程の小売価格で展開している他社に対し、90万円以下に抑えることができました。

太陽光発電×蓄電池×AIの「全量自家発電・自家消費」時代

蓄電池普及の壁は非常に高額な初期費用でしたが、やはりその後長く運用していく中で、日々の電気料金やメンテナンスの方がユーザーのエネルギー生活を左右するものです。さらに一つの製品として、もともと高額な製品なのでより有効に利活用できなければ、また蓄電池の普及は鈍化すると思いました。再生可能エネルギーの出力不安定さを解消し、初期費用を抑えた上でできる工夫。それは、いかに高い製品を「働かせる」か、つまり充放電を制御させるかが重要であると考えたのです。一般的な家庭用の蓄電池は、充放電の切替など手動操作が必要です。また、利用タイプも固定3タイプしかなく、ご家庭の電気の使用状況や太陽光の発電状況、電気代の契約内容により充放電を調整することはできませんでした。
そこで、AIに当社で蓄積してきた発電量や需要の予測、日本全国の天気予報などのデータを搭載し、ご家庭ごとの電気使用状況、電気代の契約情報など日々の状況を学習させ、各家庭にタイムリーで最適な充放電を設定できるようにしました。つまりユーザーの操作を一切なくしたのです。こうすることで充放電の無駄を徹底的に排除し、蓄電量4kWhをフル活用できる製品が開発できました。蓄電池が「自ら無駄なく働く」ので、電気代も低減でき、一般の家庭でも精度の高いエネルギー発電・需給システムを運用できるようになりました。今後はLooopでんきとも連動し、蓄電池を導入されたご家庭にとりお得なプランを提供することでもご家庭への普及を進めて参ります。これからは家庭で発電した電力だけで、生活のエネルギーをまかなえる時代になっていくのかもしれません。そのシステムは、家庭に限らずビルや店舗、街路灯など、活用できる環境が無限にあります。それぞれの用途に合わせたハードと制御方法を組み合わせて、皆さまに最適な商品を展開してまいりたいと思います。